ーーtetoruの集金機能を導入する前、どのような課題がありましたか?
八千代市では給食費は市会計となっているため、本校では教材費や修学旅行の積立金の集金を行っていました。もともとは銀行振込で集金していましたが、未納が増えたことから手集金に切り替えたんです。ですが、生徒数が約900名という大規模校のため多額の現金を扱うことになり、教職員への負担が非常に大きいことが課題でした。
集金日は生徒から担任が現金を預かり、帳簿に記録。さらに管理職がダブルチェックを行い、最終的に銀行に持ち込むという流れで1回あたり4〜5時間かかっていました。さらに封筒やプリントの準備、未納者への個別対応など、事前・事後の業務も膨大でした。
その影響で、学級担任が普段生徒と交わしている「やりとり帳」については、集金日は返信する時間がとれず、「申し訳ないけど、この日は見られないからね」と事前に伝えなければならない状況でした。
ーー生徒への影響もあったのですね。
はい。そもそも生徒に現金を持参させることへのリスクも感じており、何かトラブルに巻き込まれかねないという心配もありました。
それに最近はキャッシュレス化が進んでおり、現金を常に用意しているご家庭も少なくなっています。保護者の方にとっても、ATMや銀行に足を運び、手数料を払って現金を準備するという負担が大きかったと思います。
ーーこれらの課題を受けて、tetoruの導入はどのように進められたのでしょうか?
tetoru自体はすでに活用していましたが集金機能が新たに追加されると知り、「これはぜひ導入したい」と感じました。多くの自治体では、こうしたツールの導入は教育委員会が主導することが多いと思います。しかし、本校は大規模校ということもあり、特に集金業務に大きな課題を感じていたため、先んじて学校単独で導入を決断しました。
そこで、まずは教職員に説明し、その後PTA本部と相談の上で正式に導入を決定。初期費用はPTA会費を活用し、利用手数料は保護者にご負担いただく形としました。ただし、希望者には従来どおり手集金にも対応できるよう柔軟な運用を決めました。保護者への説明は、3月に新2・3年生の保護者会で行い、新入生の保護者には4月の入学式で説明しました。
ーー保護者の方々の反応はいかがでしたか?
説明会に参加された保護者からは、特に反対の声はありませんでした。導入目的として「お子さまの安全を守ること」「現金の準備という負担を軽減すること」を丁寧にお伝えし、ご理解をいただけたと思います。
一方で、説明会に参加できなかった方には背景まで十分にお伝えできず、お手紙でのご案内となったため、「なぜ教員の負担軽減のために保護者が費用を負担しなければならないのか」といったご意見も寄せられました。そうした声に対しても、安全性や利便性の観点から改めて説明し、ご納得いただけるように努めました。
また、PTA本部にも何件か問い合わせがあったようですが、事前に学校側の意図を共有していたため、導入趣旨を理解し、保護者への説明にも協力していただけたのは非常にありがたかったです。
ーー実際に導入してみて、どのような効果がありましたか?
現在、まだ導入して2ヶ月ですが、全校生徒の約8割の保護者がtetoruの集金機能を利用しています。通勤電車などの隙間時間にスマートフォンから口座登録できるなど利便性が高く、保護者間でも評判が広まっているのか徐々に利用率が高まってきています。
導入後、集金業務にかかる時間は従来の4分の1ほどに削減されました。以前は、1回の集金に4〜5時間かかっていたのが、今では手集金分の入金作業まで含めても1〜2時間で完了します。特に学級担任は集金作業が10分程度で終わるようになったので、集金日でも普段どおり「やりとり帳」に目を通し、返信する時間が確保できています。
集金のダブルチェックを担っている学年担任も、以前だと午後まで手がつけられなかった授業準備に早めに取りかかれるようになり、学校全体として「生徒のために使える時間」が増えました。
ーー今後、tetoruの活用についてどのように考えていますか?
市内にも同じような課題を抱えている学校はありますが、「費用負担をどうするか」「保護者理解をどう得るか」といった壁にぶつかって、なかなか導入に踏み切れないケースも多いと思います。
本校の場合は、PTAとの連携や任意での利用といった工夫を重ねたことで、保護者の理解を得ながら進めることができました。何か新しいことを始める場合、抵抗感や不安を感じるご家庭もいらっしゃるので無理に押し付けることはしたくありませんでした。一方で、「全員が納得しなければ導入できない」としてしまうと、いつまでも現状が変わらないとも思いました。そのため、保護者の方々とは丁寧にコミュニケーションをとりつつ、選択肢を残すことで、うまく移行ができたと思っています。
全員の利用を必須としなくても結果的に業務量は大幅に削減されていますし、今後も口座振替への移行は進んでいくと考えています。
学校が扱う集金の種類はまだ多く、改善の余地は十分あります。今後も工夫を図りながら、生徒中心の学校運営に力を注げるよう取り組んでいきたいです。