――tetoruの集金機能を導入するに至った背景をお伺いできますか?
根本の目的は「働き方改革」でした。所沢市では昨年度より給食費が無償化され、現在では教材費等の集金のみとなっています。給食費の集金がなくなったとはいえ、担任が毎月集金し、現金を数え、業者へ支払うという一連の業務は非常に大きな負担となっていました。ミスが起こらないとも言えませんし、子どもたち自身が持参した現金を紛失するリスクもあります。
私自身、私立学校や民間企業での勤務経験があるため、この「古い文化が残る学校」をどうにかしたいという思いが強くありました。昨今、教員のなり手不足が話題となっていますが、そこを解決するためにも業務負担の軽減は急務です。そもそも集金業務は教員のやる仕事ではないと感じていました。
――集金業務に関する課題感は、以前からお持ちでしたか?
はい。以前勤務していた小学校でも現金集金から口座振替への移行を提案し、実現までもっていきました。現在も口座振替が続いているようです。その後赴任した中学校ではすでに口座振替が行われていたので、「やっぱりこの方がいいよね」と再認識しました。そして荒幡小学校に赴任してから再び現金集金を目の当たりにし、教員たちが大変な思いをしていると感じて積極的にDX化を進めようと思いました。
――これらの課題を受けて、tetoruの導入はどのように決められたのでしょうか?
集金業務を現金ではなくシステム化することについては、昨年の6月頃から教頭と話を進めていました。どのシステムを使うか検討していたところ、tetoruが集金機能を提供していることを知り、前任の教頭がその情報を私に教えてくれました。
その頃、tetoruだけでなく、他社が提供する集金サービスについても並行して情報収集していました。候補として考えていたのはコンビニ決済サービスで、PayPayなども使えて、いつでも決済が可能というメリットがありました。
――他社サービスも検討されていた中で、tetoruの集金機能の導入を決定した決め手は何でしたか?
校務支援システムであるEDUCOM C4thと連携している点です。C4thで管理している児童生徒名簿がtetoruの集金名簿としてそのまま取り込めるため、抜け漏れがなく正確に集金ができるという大きなメリットがありました。また、金額の入力もファイルで簡単に取り込めるため、非常に手際よく作業ができることが魅力でした。
――導入はどのように進められましたか?
まずは教職員に説明しましたが、業務負担の軽減につながる取り組みとして、みんなから前向きに賛同を得ることができました。本校は市内でもいち早く勤務時間外(16:50から翌朝8:20まで)の留守番電話を導入したり、会議の見直しや勤務時間の短縮をしたりと、もともと積極的に働き方改革を進めている学校のため、今回の取り組みもスムーズに受け入れられました。
ちなみに集金機能の導入に当たって市内の校長会で話す機会があったのですが、他の学校からも関心が寄せられました。費用の捻出が課題と感じているところが多いようでしたが、「御校でうまくいけば、うちも検討したい」という声がいくつか聞かれたため、「それならまずはうちが先陣を切って取り組もう」ということになりました。
――保護者からの反応はいかがでしたか?
いきなり導入を告知すると混乱があるだろうと考え、まずはPTA本部と相談をしました。そこで保護者としての色々な意見をいただき、一つ一つ丁寧に回答していきました。
例えば、本校では保護者の振替手数料の負担を考慮して集金回数を昨年度よりも減らしたのですが、その点について、「トータルで支払う金額が一緒でも、1回に支払う金額が多くなると経済的に苦しい家庭があるだろう」という懸念の声をいただきました。そちらについては、振替手数料がその都度かかってしまうが、分割にも対応できることなどを伝えると納得していただけました。
また、それまでPTA会費は学校徴収金とは別でPTAが現金で集めていたのですが、集金機能導入に合わせてPTA会費も一緒に引き落としすることをこちらから提案しました。それによりPTA本部も保護者も負担がさらに減るので、納得が得られやすかったと思います。最終的に、集金機能導入の際にかかる費用も、保護者の負担軽減や子どもの現金持参のリスク回避に繋がるとのことで、PTA会費から負担するという申し出をいただきました。
――実際に導入してみて、どのような効果がありましたか?
担任の集金業務負担はゼロになりました。担任には教材購入時に帳簿を付けてもらう程度で、集金業務においては全く負荷がかかっていません。現在は私が主導で集金業務を行っていますが、今後は教頭を始めとする管理職と事務職員で分担可能だと考えており、担任に業務が割り振られる予定はありません。
学校全体の残業時間も大きく減少しています。令和5年度の5月の平均残業時間が44時間だったのに対し、令和6年度は31時間、集金機能を導入した今年度は20時間と、2年前の半分以下という水準にまでなっています。これは、先ほど申し上げた留守番電話の設定や会議の削減などに、新たに集金業務の効率化が加わり、学校として様々な改革に取り組んできた成果だと感じています。
――未納率の変化についてはいかがですか?
未納件数も大幅に減少しました。現金集金していたときは1クラス当たり2~3人、全校で20~30人くらいは当日回収できていませんでした。給食費を口座振替していたときも、毎月10数件程度は引き落とし不能でした。それが今回は5件だったので、大分減ったな、という印象です。保護者が引き落とし先を好きな口座に指定できるので、生活口座を使えるというのが大きいのでしょうね。
――最後に、今後の学校のあり方について、どのように考えていますか?
教員のなり手不足を解消するためにも、負担軽減がしっかりと実現できる状況になってほしいと思っています。
私が見てきた中で、学校現場はまだ古い文化が残っていると感じています。時代が変わっているにもかかわらず、自身の価値観を変容させることができない人たちをたくさん見てきました。若い教員の方が業務改革や働き方改革の話をすんなり受け入れてくれますが、管理職である私たちの世代がまずは変わらなければいけないと考えています。
今後とも、持続可能な学校教育の実現のために、工夫を凝らしながら業務改革を進めていきたいと考えています。
※2025年8月13日(水)~2025年8月15日(金)は夏期休業になります。